隠居のうんちく



 
                         信者のハシゴ

                               

 日本の文化庁の統計によりますと、わが国の各教団の信者の合計は二億一千万人だそうです。
 この数字を、わが国の老人赤児もひっくるめた総人口と比較して見て下さい。
 どうですか、わが国の総人口よりも、信者合計のほうが、断然多いじゃありませんか!
 これはどういうことか?
 言うまでもなく、これは、日本人には宗教のハシゴをしている人が、少なくとも信者の二人に一人くらいは居る、ということでしょう。
 ちょっと考えてみてください。
 たとえば、アラブ人がイスラム教のモスクで祈ったついでに、ちょっとユダヤ教のシナゴーグにも立ち寄ってお賽銭をあげたりしたら、いったいどんなことが持ち上がるでしょうね?
 ところが、日本ではそれと同じようなことが、なんの問題もなく日常的にまかり通っているのです。
 ですから、日本では、血で血を洗うイスラエルとパレスチナとの間の戦いのようなものは、どうにも起こりにくいし、本当の意味では想像も理解も出来にくいのではないでしょうか。
 つい数十年前までは、日本は神国で、日本国天皇は現人神(あらひとがみ)と呼ばれる神様でした。
 ところが、みなさまご存知のように、古代の飛鳥時代の聖徳太子や奈良時代の聖武天皇以来、ずーっと明治になるまで、天皇家は仏教の真言宗の最大の檀家だったのです。
 これは、譬えてみれば、バチカンのローマ法王が代々熱烈な仏教信者だった、というのと同じくらい、おそらく外国の人には奇想天外に見えることなのでしょうね。

                               

 
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