隠居のうんちく



 
                         自転車の乗り降り

                               

 自転車に乗っておられる皆さんは、乗り降りは、右からですか左からですか?
 多分、大抵のかたは左からだろうと思います。
 スタンドもストッパーが左に付いていますしね。
 では、どうして自転車の乗り降りは左からなのだろう?
 ……ということを考えた事がありますか?
 ないでしょうね。ないほうがいいような気もしますね。
 ところが、隠居は考えてしまうのですね。どうしようもない人ですね。
 考えてしまうけれど、隠居にも判りませんでした。
 ところが先日、ふと或る記事を目にしたとたん、隠居の脳裏に閃くものがありました。
 それは、欧米では乗馬の際の乗り降りは、左からだ、という記事でした。
 ついでながら、日本では江戸時代までは、古来馬の乗り降りは右からだったようです。
 自転車が発明されたのはヨーロッパで、そして女性が自転車に乗るために発明されたファッションが「ニッカーボッカー」だったのです。
 自転車は日本へはもちろん外国から移入されたものですから、当然外国で考案された形が基本になっています。
 馬も自転車も、跨って乗る、という共通点があります。(バイクもそうですが、これは自転車からの移行でしょうね。)
 自転車が初めて作られた折り、その乗り降りはおそらく乗馬が参考にされたのではないでしょうか? だから自転車も左からなのでしょう。
 どうです、大したヒラメキでしょう!
 え? そうでもない? (うなだれる)

 では、どうして欧米では左から馬に乗り降りし、日本では右から乗り降りしたのでしょう?
 それについても、隠居のヒラメキがありました。
 日本の騎馬武者は、元々は武器が弓矢でした。刀は歩兵が使ったのです。(戦国時代以降はそれが逆になって、騎兵が刀、歩兵が弓矢になりましたが。)
 そして弓は左手に持ち、矢は右手に持って射るわけですが、従って馬に乗る時も弓は左手に持っています(矢は背中に背負った矢筈に差しています)。
 すると、当然手綱は右手に持ちます。手綱を右手に持てば、馬に乗るには右から乗るのが当然です。
 その習慣が、戦国時代以降もそのまま残ったのではないでしょうか。
 ところで、ヨーロッパでは、騎士の武器は刀でした(弓矢は歩兵)。ですから馬に乗る時は両手が空いているから、どっちからでも乗れます。
 でも、刀は左の腰に吊されています。とすると、右から乗ると刀が馬の背を越えるので、あちこちにぶつかって不便です。左から乗った方が楽です。
 かくて、馬に乗る時は、日本では右から、ヨーロッパでは左から、というわけです。
 うるさい! こじつけでもなんでも、辻褄が合えばいいんだ!
 文句あるか!(あるでしょうね)
 乗馬ついでに、初めて乗るかたに、一言アドバイス。
 乗るとき、つい馬に近い方の足を鐙に乗せてしまいがちですが(つまり左から乗ると、右足)、そうすると、馬に跨った時、目の前には馬の首が無く、お尻と尻尾があります。
 隠居も大学の体育に乗馬を選んで、とんだ恥をかきました。

                               

 
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