連句「寒明けや」の巻 横丁のご隠居宮原昭夫公式サイト
連 句







間髪置かず、巻いたのでありました。
場所は前回の会場と同じ。
捌きも屁散人さん、執筆も西北さんと、同じなのであります。
連衆ががらりと入れ替わりました。
さらに、集合を午前11時半からとして、飲食の準備怠らず、巻き上げるぞとの鼻息も荒く、連衆はどっとどっとと集合したのでありました。

開始は正午ジャスト。
突然、テーブルには緑色のタイマーが・・・。紫貴さんのにこやかな顔。
「今日は、これでね」
でも、たいてい途中から挫折しちゃうんだよね、タイマー。
「だいじょうぶ、私が管理します」
紫貴さん、ニコニコしてる・・・
急遽、連句にタイマー係という新たな仕事が出来て、捌き、執筆、タイマー係の三位一体路線が提示されました。でも、この時はまだ誰も三位一体路線が、どんな成果をもたらすか想像さえしていなかったのでした。

作句5分、捌きに5分、会わせて10分で作っていくと、歌仙36句だから、360分。で、時間に直すと6時間。正午に始まったのだから、午後の6時には巻き上がる予定。
予定は予定、絵に描いた餅、夢でのラブシーン、捕らぬ狸のナンタラカンタラ。
なにせ、表6句に3時間もかかったことのある、いやいやそうじゃなくて、かけたことのある身としては、6時間で巻ければ元町通りの真ん中で逆立ちして見せちゃうもんね。
まあ、誰も見たくないだろうけれど・・・現実にじゃなくて心意気ね、そのくらいの。

ところがタイマーというのはすごいのです。さらに、紫貴さんにはど忘れなんかないのです。いかに自分が作句に熱中していても、ことタイマー管理に関してはクールなのです。そういう紫貴さんの気迫に押されて、表6句を作り上げる頃には、桜花賞の牝馬一斉に第四コーナーを曲がりました、みたいな、怒濤の健吟なのでした。
そうなると、もう止まらない。どんどん出ちゃう。くるくると転じて、どどーんと飛躍しちゃう。
「次は、ちょっと休んでください」と西北さんに指名されたりしながら、自粛したりしながら、飲食もさらさら怠らず。そのうえ、出された句は全部読み上げ、わあわあと意見も交換されていくのです・・・
裏の折端、歌仙のちょうど真ん中ね、午後3時半。脅威の3時間30分。
ううううっそー。嘘じゃない! 嘘なんかついている間もないんだから!
そして、なにより恐ろしいのは、誰も疲れていないということなのです。

ここで、ちょっと連衆の状況を説明すると。

連衆は総勢8名。
タイマー係の紫貴さんは、歌仙「寒明けや」の巻でご一緒して以来、なんとまあ3年ぶりの連衆です。しかし、紫貴さんは偉大です。

鬼灯さんは、恋文に寄稿していただいている添田ひろみさん。連句のおもしろみを十二分に発揮して、転じることと飛躍することに関しても、もう脱帽です。

薄さんは、小城伊津子さん。燻し銀のような・・・じゃなくて、燻しても燻しても煤けない白銀の輝き。さらに、怖い。かなり怖い。ぐっさりと怖い。要所要所に打ち込まれた楔のようだ。

芽笹さんの発想のスケールのデカサには、たじたじ。さらに、お茶目。スケートで体力を付けて、もう馬力があるのね。作句も手早い。手早くて、疲れを知らない。それだけではない、挙句の「春の星見て未来を思う」には・・・ため息が。

連句初体験のまゆ子さんは、恋文の波見まゆさん。しとやかで、矛楯するようだけれどあでやか。隣に座っていたすりきれは、自分の騒々しさとがさつさを深く反省しつつ、絶対に次ぎもご一緒しましょうとハートマークを乱射。まゆ子さんの句はふんわりとしているのです。

それに、屁散人さん、西北さん、松子ことすりきれで、八吟歌仙となったのでした。

そうして、巻き上がったのは午後7時。


最後まで、紫貴さんは仕事をまっとうしました。
万歳三唱のあと記念撮影。鬼灯さん撮影。西北さんの手にあるのが、タイマーです。すりきれは腰が抜けています。
早ければいいというものではないけれど、早いというのはいい。平均一句11.77分。
タイマーを会で購入することにしました。しかし、ものではないと思うのです。
例え黄金のタイマーがあって、信じられないくらい清らかな調べで時を告げても、タイマー係がいなければ実りは少ないでしょう。
さらに、タイマー係がその熱意を示すことで、連衆の心は燃え上がりました。


その後、充分に反省会という名の自画自賛会をして、終了しました。
今回も捌いてくださった屁散人さんと執筆の西北さんは、口をそろえて「お願いだから、次回は男をひとり」。
あーら、なに言ってんだか、と連衆は鼻で吹き飛ばし、シャッターの降りた元町商店街をはっしはっしと石川町駅へ向かったのでありました。


報告すりきれ

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