連句「寒明けや」の巻 横丁のご隠居宮原昭夫公式サイト
連 句













 八重桜が咲く頃に、お花見連句はいかがですかと、ご隠居のお連
れ合いの青子さんからありがたいお誘いを受けて、いいんでしょう
か、嬉しいですと、ぴょこぴょこ飛びはね、蓮衆に声を掛けるとみ
んなわあわあと喜んで、こんなに大人数で巻けるのでしょうか、と
いうほどの大人数参加。堀口みゆき宗匠がいらっしゃるものどうに
か捌いていただけると、もう、負んぶに抱っこで、ぞろぞろぞろ。
各自、手にはお酒やおつまみをぶらぶらさせて、こんにちわとご隠
居宅を訪れたのは、4月11日のことでした。         

 あまりにいいお天気。場所はお庭。ご隠居宅のお庭とお隣宅の合
体お庭なので、とても広いのでした。座布団はいらないか、座ると
地面に足は届くかと、ご隠居は亭主としての心遣いを薄さんに。い
くつもパラソルを広げていただき、私たちは日陰の中で足をぶらぶ
らさせたり(届かなかったわけではない)、席を立ってふらふらし
たりしながら、いろいろな猫がやって来て、お庭の端に置かれたボ
ールでお食事をしていくのを見たり、大きな桜の木や、珍しい桃の
木を見ながら、連句のことを忘れたり、思い出したりしながら、不
思議な時間を過ごしたのでした。               

 いつもの連句会と同じく、すべてを録音して水も漏らさぬつもり
でしたが、どうも心がお庭や、春の日射しや、焚き火の煙や、ご用
意いただいたご馳走…届いたばかりの筍の姿やその味に、また、サ
ザエの尻尾のくにゅくにゅの所の苦旨さに囚われて、なにかが欠落
してしまいました。今回は、いつもの実録連句報告をやめて、わず
かばかりの写真ですが、「連句会の春の日」を紹介します。   

 八重桜はまだ三分咲きでしたが、花の咲いているところはもった
りとしていました。                     
    

 遠目には八重桜と見まごう木がありました。桃です、菊桃という
 らしいのです。花びらが独特で、そのうえ花の色が鮮やかなのです。
(たいていきれいにとれている方は芽笹さん提供の写真です)
   

 風が吹いて山吹が揺れたりしました。

 ちっちゃな植木鉢も満開でした。              
   

 食べ頃だそうです、柔らかな柿の葉っぱ。天麩羅で召し上がるそ
うです。                          

 そして、にょきにょきと地面から飛び出してきたように。   





 植物だけではなくて、鬼灯さんが見つけた蟻の巣穴。     

 これは表六句製作中の蓮衆のみなさま。総勢9名で、初参加は風
子さん。いくら真剣になろうにも、春がトントン肩を叩くものだか
 ら、どこかうかれてしまいます。私はレポーターの役を忘れました。

 遠くから送られた来た取り立ての筍。今から煮てあげましよう、
と青子さんに言われて、その前にくんくん匂いも嗅ぐ。     

 気がつくと、こんな風に皮が干されていて、なにかすごいことに
使われるのだろうといろいろ考える。             

 表六句が終わり、飲食が解禁になり、本格的にいろいろ始まる。
まず、落ち葉の焚き火。ご隠居と一さんと私は焚き火の上に炭を乗
せて扇ぐ。煙があっちへ行ったりこっちへ行ったりする。そのたび
に、逃げるように焚き火の周りを回りながら扇ぐと、落ち葉の焼け
る匂いが染みつくような気がして嬉しくなる。炭に火が付き始めた
頃の写真。                         

 炭が熾り、バーベキューのコンロに移されて、鯛の蒸し焼きが出
来上がった。その間の観察は出来なかった、連句にもどっていたた
め。                            

 お料理の手が、鯛を取り分けてくださった、青子さんの手。  

 そして、つぼ焼きを頂く。どれも新鮮で、焼き上がって取り出す
と、尻尾の先のような、カタツムリの丸まったように見える辺りの
緑色が鮮やかで、口の中でぷちんと薄皮がはじけるとほろ苦くてど
こか甘い海の味が広がる。私はほじくるのが好きなので、身の取り
出し係をする。                       
 

 日は傾いて、私たちは室内に入り、飲食の続きと連句の続きをす
る。炊きあがった筍は春の味で、ゆがくて旨い。旨いなあ、旨いな
あと言いつつ、杯も重ねているうちに無事巻上がっていた。愉しか
ったなあと思いつつ、愉しかった正体が連句だったのか、春のお庭
だったのか、青子さんのおもてなしだったのか、みんな混ぜこぜに
なってゴトンゴトンと電車に揺られてかえりました。
報告すりきれ

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